5歳8か月男児(H9.7〜H9.12入院)


・児が入院となったいきさつ
・児の入院前の状態
・入院前の食生活や生活習慣の特徴
・入院前 母親の心境
・入院前(7/15)「親子関係診断テスト」

・入院後の「発達評価・津守式乳幼児精神発達検査」
・入院後の日常生活
・児の現状は?
・児への対応の大きな方針

・入院1か月目(7月)
・入院2か月目(8月)
・入院3か月目(9月)
・入院4か月目(10月)
・入院5か月目(11月)
・入院6か月目(12月)

・退院に向けて

 

 

・児が入院となったいきさつ このページのトップへ
  • 同年代の子どもたちと一緒に遊べない。
  • 1歳半頃、保育士からの呼びかけに反応せず、無気力・無反応を指摘される。
  • 就学児健診で小2より“特殊学級”をすすめられ、また“軽度の自閉症”と言われる。

 

・児の入院前の状態
  • 生後4ヶ月から保育園へ預けられ、1歳 まで普通。その前後、父母間でトラブルがあり、帰宅後すぐビデオを見せ、構ってあげられない状態が一年程続く。(多い日で一日6時間テレビ視聴)
  • 1歳半で言葉の遅れがみられる。
  • 2歳頃も一日ゴロゴロし、何事にも無関心。
  • 児童相談所にて“自閉症”と診断。母親と信頼関係を築くよう言われる。
  • 児が2歳の時、両親離婚。上の2人の姉兄と離れ、母親の実家へ。祖父母、母と4人暮らしが始まる。
  • 保育園では落ちつきがなく、話もジッと聞けない。他児と行動を共にできない。
  • 不都合なことは逃げ回る。

 

・入院前の食生活や生活習慣の特徴

偏食→(オムライス、チャーハン、ハンバーグ、スパゲティ、ラーメン、からあげ、果物のみ食べる)
牛乳→(色をつけると飲む。例:いちご牛乳、コーヒー牛乳)

※親が気を付けていること→たくさん食べるよう好きな物だけ食べさせる。

起床(8時) 就寝(21時〜23時)
起きている時間はほとんどテレビ視聴。

 

・入院前 母親の心境

児童相談所に親子の信頼関係を築くよう言われ努力。少しずつ改善したところに長期入院で、再度この関係が壊れるのでは?と心配。

児に対しては過保護でなく放任的で結果的に遠ざけていると思う。

 

・入院前(7/15)「親子関係診断テスト」

※母親の養育態度
厳格・溺愛(不一致)の領域が危険地帯。
気分や都合で厳しくなったり、時に甘やかしすぎたりしやすいといった傾向が見られる。

※児の行動の特徴。
反社会性(乱暴、非協力、規則を守らない…)
非社会性(孤独、集団不参加、臆病、無表情、対人的不適応、依頼心、今期・落ちつきのなさ、退行〈ひねくれ、だだこね〉

 

・入院後の「発達評価・津守式乳幼児精神発達検査」 このページのトップへ

7/15→全体的に約1年半の遅れ。特に探索、社会面での遅れが目立つ。

10/7→全体的に約1年の遅れ。領域別にみると他者や環境との関わりで約2年半の遅れがみられ、逆に日常生活の自立では約1年の年齢以上の発達がみられる。発達にかなりアンバランスがある。

12/16→全体的に約1年半の遅れ。前回の検査に比べ「運動」が半年遅れ。「社会」が半年発達したため全体のレベルに変化なし。

 

・入院後の日常生活

自然の摂理に合わせて規則正しい生活をする。
自分のことは自分でする。 → 自立目的

 

・児の現状は?

〈こだわり〉
就寝中だが、一日中靴下を履きたがる 。
タオルをしっぽがわりにし、ズボンの後ろにつけたがる。
人物画を描くと必ず尾をつける。

〈特徴〉
TVのコマーシャルはほとんどフレーズを覚えている。
外出すると虫探しに没頭。
会話が1本調子で単語の羅列が多い。
手先が器用で粘土遊びが大好き。小動物製作が上手。

 

・児への対応の大きな方針
  • 自立を促す(手出し口出し無用)
  • 自分でする習慣を身につける。
  • スタッフは常に“待つ”姿勢で対応
  • 常に集団の中で行動する。
  • スタッフがお世話する召使いにならないよう、生物としての順位をはっきりさせる。

〈保育士として心がけたこと〉
同年齢の児と日々日常生活を共にすることで切磋琢磨しあい成長する。

  • 遅く寝て遅く起きる生活のリズムから、日の出、日没のリズムへ。
  • 困難なことにはとことん自らの力で向き合わせ、改善する方向へもっていかせる。
  • 海へ山へ、できるだけ大自然の中へ出向き、自ら何か興味があるものを発見し、他児と共有する喜びを知る。
  • 野菜作り、料理教室などを通し、食育の部分を直接体験することで食物に対する感謝の気持ちを持ち、さらに苦手意識も克服する。
  • 児の目を内から外へ引き出せるように、見る、触れる、感じる部分を重視する。
  • 退行現象には見て見ぬふりの姿勢。

〈保護者に対してフォロー〉
  臨床心理士のカウンセリング
  保育士との面談
  入院の記録の郵送

上記の方法で常に児の成長について報告。
保護者の相談等も適時に受け付けて対処。

 

・入院1か月目(7月) このページのトップへ

日常生活における負の行動

  • 「先生、トイレ!」単語の羅列のみ。オウム返しが多い。話し方も一定のトーン。
  • 看護師の質問をさえぎるように、興味のある事をしゃべりまくる。
  • 内服促すと足でスタッフを蹴り逃げる。
    ※男性看護師のみ。服薬。
  • スプーンを使いたがり、時には手づかみ。
  • ボール投げごっこ→自分にボールが来ると「恐竜の卵だ!」と言い、他児に渡さず虫とりへ。
  • 注意受けると、靴・本・おもちゃなど身の回りの物を投げちらかす。
  • 他児と同じ行動がとれず、常に離れた所で一人遊びが多い。

 

日常生活における正の行動

  • 恐竜の話になると生き生きとした表情でスタッフに話す。
  • 畑にて、ミニトマト収穫。1人3コずつと言われ、4コとり、注意を受けちゃんと1コ返しにくる。
・入院2か月目(8月)

日常生活における負の言動・行動

  • 片付けず注意受けると余計ちらかす。
  • ラジオ体操間に合わず。朝なかなか起きれず。
  • 自ら配膳。嫌いな野菜類一切つがず。
  • 用もないのにNsコール頻繁に鳴らす。理由聞くと恐竜の名称を次々にしゃべりまくる。
  • 庭園にて昼食。カレーのピーマン食べず。注意うけるとピーマンを箸でつつき、皿をひっくりかえす。
  • 他児の食事をとって食べたり、食後下膳車をあさる。「食べていいんだよ!」と。
  • 朝の診察。自ら来ることなし。
  • 他児の点滴ルートをハサミで切り、逃げる。
  • マット運動。何をしても「出来ない!」と泣く。
  • ボール遊び。ルール教えるがイライラして泣く。すぐに土いじりや虫探しへ。
  • 掃除時間、他児が片付けている先からちらかす。注意受けると短期入院児の部屋の前で泣く。
  • 誕生児の顔を描かせるといつのまにか恐竜の顔に。
  • 熱発でプールに行けないとなるとカウンターの鉢をひっくりかえし、物をこわす。

 

日常生活における正の言動・行動

  • 服薬に関しては拒薬あるも自ら口を開け内服。
  • 食後の検温より自ら名を告げ検温へ。
  • 外へ。ぐずり部屋に残っている児に気付き、「○○ちゃん、来てないね!」と。(人のことを少しずつ気にかける)
  • 他室で赤ちゃんが泣いていると看護師に教えに来る。
  • 看護師に本を読んであげようとする。一文字ずつ丁寧に読む。
  • 8月下旬、自ら「お薬下さい!」と。
  • 「看護師さん、もしもしさせて!」と逆に看護師の胸に聴診器をあてる。
  • 縄を結び、汽車ごっこ。院外を回ると、楽しかったのか「もう1回、まわる!」と。
  • 散歩中、仲のいい子と手をつなぎ出す。
  • 8月下旬、苦手な野菜を眉間にしわをよせ食べる。
  • 鶏がケガをしていると、頭をさすり「痛いの?」と話しかける。
・入院3か月目(9月)

日常生活における負の言動・行動

  • 山へ。車中、目についたものすべて固有名詞で挙げる。一本調子のしゃべり方。
  • 朝なかなか起きれずにいるが、院長の姿を見つけるとパッと起きる。
  • 体操は他児がするのを傍観。
  • 苦手なもの食べれるがダラダラ喰いが多い。思い通りにいかないと大声を出す。
  • 診察を受けたと嘘をつく。嘘が多い。
  • 体温計をはさむと体をわざと動かしエラーにする。
  • いすとりゲーム、ボ〜ッとしており、すぐビリに。競争する意志がないのとルールの理解不足。

日常生活における正の行動

  • 散歩中、すれちがう人に挨拶できる。
  • 短期入院児に名前をきかれ、「〜です。5歳です!」と言える。
  • 「看護師さん、おはよう!」と自ら挨拶。
  • 9/10 入院後初めて自ら診察。
  • 山にて棒を振り回し、他児とちゃんばら。一人遊びから徐々に二人遊びへ。
  • 乾布摩擦でグループのリーダーになり、大声でかけ声をかける。
  • トイレにてスリッパそろえる。「えらいね!」というと「○○くんみたいでしょ!」と。(他児のいつもの行動を把握できている)
  • 具合の悪い友達の部屋へ行き、見舞う。「○○くん、大丈夫?」

 

・入院4か月目(10月)

日常生活における負の言動・行動

  • 消灯後、かまって欲しいのか詰所前に座り込む。
  • 肘をつきながら食事。注意うけると「しまった!!」と。
  • 要求を相手に伝えるが、何を…の主語がない。またオウム返し。
  • 診察。まだ来たり来なかったり。
  • ブロック遊び。他児にとられ大泣き。取り返すよう促すと、手を少しだすだけでひっこめてしまう。
  • 消灯前の片付け。他児が片付け始めてもおかまいなし。注意するち「〜ちゃんが片付ければいい!」と。

日常生活における正の行動

  • 粘土遊び。2人で1つの物を協力して作り上げる。
  • 2歳児がオマルにした尿を捨てにいってくれる。
  • 自ら物語を作り、他児に聞かせる。終了後、「どうだった?」と感想を聞く。
  • 料理教室で自らカレーライスを作る。「甘くておいしかったよ!」と頬に手をあて表現。(身ぶり、手ぶりで一生懸命表現しようとする)
  • 食事のマナーの悪い他児に注意する。
  • 洗濯物を1番に干し終わり「見て!」と。(自分の行動を認めてほしい感じ〉
  • 他児の部屋移動、すすんで手伝う。
  • 他児と木登り。頂上までいきつくと「先生、すごいでしょ!」と。
・入院5か月目(11月)

日常生活における負の言動・行動

  • 呼名されても1回で返事せず。
  • パズルをして片付けず。注意受け、余計ちらかす。
  • ススキとりへ。他児にススキとられ怒るも、取り返しにはいかず。
  • 鬼ごっこをする。鬼になるも追いかけずボ〜ッと立っている。
  • ジャムの袋開けられず、イライラして足をバタつかせる。
  • ちらしをズボンから下げ「しっぽ!」と。
  • お料理教室。「ぼくもする!する!」と意欲的だが、包丁握るとすぐ飽きて他のことをする。

日常生活における正の行動

  • 山で楽しかった思い出を短期入院児に話し、「今度一緒に行こう」と誘う。
  • 畑に大根を植えたのを覚えていたらしく、みそ汁の具を見て「これ、ぼくが植えた大根」と。
  • 夕食の配膳中、順番を守らない他児に怒る。
  • 年下の子に本を読んであげる。
  • ベッドに毛布を丸めておき炬燵を作る。他児も呼び、「一緒に暖まろう!」と。
  • 公園で拾った貝殻をとられ、泣きながら取り返しに行く。
  • サンタクロースの絵を描く。初めて恐竜でなく、頭の中でイメージした物を描く。
  • 他児と入院後初めての大ゲンカ。とっくみあいをし、自分の気持ちをぶつけている。物にあたることはなし。
  • 山へ。珍しい物を見つけては「見て!」と持ってくる。昼食ででた大根おろしをおかわりする。
・入院6か月目(12月)

日常生活における負の言動・行動

  • マット運動。少しずつやろうという姿勢みられる。自分の番が来るまで待てない。
  • 鬼ごっこ。鬼になると少し追いかけ、すぐ止め、ス〜と他児の輪から外れる。
  • 入浴時間に遅れてくる。注意うけると廊下に洗面道具一式投げだし大泣き。(時間に遅れること多くなっている)
  • ちぎり絵等、面倒臭く、集中する製作はすぐにあきらめ、別な事をしようとする。
  • 凧揚げ。凧が上がっても走らず歩く。けしかけても反応なし。
  • クリスマスリース作り。細かい作業の為、途中であきらめ、別な遊びをする。

日常生活における正の行動

  • ボール遊び。自分にボールが回ってこないと「ちょうだい!」とだけ言う。聞き返されると「ボールちょうだい!」と言える。
  • 具合が悪く、一緒に池へ行けなかった友へ、お土産の花を摘む。「○○ちゃん喜ぶよ!」と。
  • 入浴中、他児と背中こすり合う。(自発的)
  • ボール投げ。とったり投げたり積極的。
  • 洗濯物をたたまない児へ注意する。
  • 同室児が外泊することを知り、座り込み泣く。「ぼく寂しい」と。
  • 他児がえさの入ったダンボールを「重い!」と運んでいると、スーと来て持つのを手伝う。
  • 体操。扉に映る自分の姿を見て笑顔。思いっきり体を動かしラジオ体操する。
  • 服薬時間になると、「みんなー薬の時間だよ!」と教えにいく。

 

・退院に向けて このページのトップへ

入院5か月目の11月 祖母・母親面会目的で来院

児の様子
 手を合わせ挨拶。
 感情を表に出さないが、時間経過と共にうれしさを現す。
 (母に絵本を読んできかせたり、院内を案内する)

母の様子
 さりげなく対応。ベタベタしない。
 周りの同室児にも気づかいしている。
 翌日、児と同じ一日のスケジュールで動いてもらい体験。

11月中旬
 教育委員会の方と、受け入れ先の小学校校長先生と来院。
 児と数時間一緒に過ごし、面談。
 「普通学級で大丈夫」という話を頂く。

退院について
 母親より、12月末退院させて欲しいと申し出あり。


◎退院を決める目安

  • 以前持ちあわせていた症状が改善され、負の行動が見られなくなった時、若しくは児を受け入れる家族の心構え・基盤がゆるがないものとなった時。両者のタイミングを見計らい判断する。それには、試験的に外出・外泊を行い、その結果、退行現象がないかどうかが条件となる。

◎本児の退院までの流れ

  • 今回、児に対して当院の考え方としては、まだ治療中の段階(半年過ごし、自主性も芽生え、集団生活もできるようになった)。しかし、まだ仕上げの段階ではない。治療を継続する方向でいたが、“年末年始を一緒に過ごしたい”という家族の申し出があり、院長より急な着陸(退院)体制のリスクを話すも「構わない」とのこと。保護者の一方的な申し出もあり、12月末退院。